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《 理 事 長 コ ラ ム 》 |
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NPO法人福岡・翼の会理事長
弁護士 小野裕樹
平和台法律事務所 092-761-4403
ono@heiwadai-law.jp
http://www.f-jiko.net
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理事長として毎月当事者や家族の役に立つ記事を載せてほしい! という |
施設長はじめ職員さんからの熱い要望にお応えして(すみません。少し盛ってます) |
今後、高次脳機能障がいに関わる法律問題などについて書かせていただきます。 |
理事長としては新米ですが,弁護士としては35年目となり,人間としては高齢者の仲間入り |
が秒読みとなりましたから,ムダに身につけたものを含めてそれなりの知識と経験はあるはず
です(あってほしい)。 |
そんなこといっても,どうせ法律問題のコラムなんて面白くないんでしょ,と思っておられま |
せんか。実はそのとおりです。 といってしまえば身もふたもありませんが,楽しい話でなくて |
も ときどき役立つ情報もあると思いますから,どうぞお付き合いください。
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【目次】 |
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理事長コラム 第5回 「高次脳機能障がい者の就労と合理的配慮」
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1、高次脳機能障がい者の就労の難しさ
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明るく気配りができる有能な同僚が,復職したら別人のように気難しく,怒りっぽくな |
り,簡単な仕事でもミスを繰り返すようになれば,周囲はとまどいます。 |
見た目は元気になったように見える場合はなおさらです。 |
以前に比べれば社会の認知も広がったとはいえ,まだまだ高次脳機能障がいなんて聞い |
たこともないか,聞いたことはあるがどんな障がいか,周囲はどう接すればいいのか わ |
からないという人がほとんどでしょう。 |
このような周囲や社会の無理解こそ,高次脳機能障がい者の就労や社会参加を妨げてい |
る大きな要因です。 |
障がいは,日常生活や社会生活を制約するものですが,その制約の原因は,個人の心身 |
の機能だけでなく,周囲の環境や社会にもあり,社会の側の「壁」を取り除くのは社会 |
の責務だと考えられるようになっています(「社会モデル」)。 |
高次脳機能障がい者の就労においても社会の側の「壁」が取り除かれなければなりませ |
ん。制定が望まれる「高次脳機能障がい者基本法」もそれを目指すものです。 |
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2 障がい者雇用における「合理的配慮」とは
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日本が障害者権利条約の批准(国内法としての効力を生じさせる手続)に先立ち, |
障害者雇用促進法が改正され,社会の側の「壁」の解消のために,障がい者に対する |
差別の禁止が規定されるともに,事業主に「合理的配慮」を提供する義務が課せられま
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した。この「合理的配慮」には,募集・採用場面での配慮と職場での就労場面での配慮 |
が含まれます。職場での配慮について,法は次のように規定しています。 |
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事業主は,障害者である労働者について,障害者でない労働者との均等な待遇の確保 |
又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善する |
ため,その雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に |
必要な施設の整備,援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならない。 |
ただし,事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは,この限りでない。
(障害者雇用促進法36条の3) |
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厚生労働省の「合理的配慮指針」には,高次脳機能障がいに関する合理的配慮の
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事例があげられています。その一部を紹介します。
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(募集・採用) |
面接時に,就労支援機関の職員等の同席を認めること。 |
◆ 高次脳機能障害には,失語症や注意障害,記憶障害,遂行機能障害等の様々な症状 |
があります。これらは,それぞれの障害特性や必要な配慮が異なっています。 |
したがって,高次脳機能障害の方と面接官の意思疎通を助け,また,高次脳機能障害の |
方の障害特性等 を面接官に知ってもらうために,面接時に就労支援機関の職員等の同席 |
を認めている事例があります。 |
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(採用後)
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業務指導や相談に関し,担当者を定めること。 |
◆ 障害者が円滑に職務を遂行するために,業務指導や相談に関し上司などを担当者と |
して 選任している事例があります。担当者を定めることにより,障害者が働く上で |
支障となっている事情を互いに認識し,その支障となっている事情の解決のためには |
どのような配慮 が適切かといった相談に対応することができます。
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(採用後)
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仕事内容をメモにする,一つずつ業務指示を行う,写真や図を多用して作業手順を |
示す等の対応を行うこと。 |
◆ 高次脳機能障害の方の中には,新しいことを覚えることや,同時に複数の作業を |
こなすことに困難を抱えている方もいます。このような方に対しては,業務指示を |
メモにして毎回作業前に確認したり,写真や図を多用して作業手順を示す等の配慮の |
事例があります。
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(採用後)
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出退勤時刻・休憩・休暇に関し,通院・体調に配慮すること。 |
◆ 個々の障害者の障害特性によっては,通常の時間に出勤することが困難であったり |
体調に波があることや通院・服薬を要することがありますが、その場合は個々の障害者 |
の状況に合わせて適切な配慮を行うことが必要です。例えば,体調に合わせ,勤務時間
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・休憩時間等を柔軟に調整している事例があります。 |
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(採用後) |
本人の負担の程度に応じ,業務量等を調整すること。 |
◆ 高次脳機能障害の方には,記憶と学習に困難を抱えていたり,意識を集中しにくく
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疲れやすい,意図した動作を行うことが難しい等の症状がある方もいます。したがって |
本人の負担に配慮した業務内容とする,本人の様子を見ながら業務量を調整する等の |
配慮の事例があります。 |
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なお,高次脳機能障がいによって十分な仕事ができないとして解雇されることもあり |
ますが,このような配慮によって雇用が維持できると判断されれば,解雇が無効になる |
ことがあります。 |
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次回は,「高次脳機能障がい者と消費者被害」についてお話しします。 |
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理事長コラム 第4回 「高次脳機能障がい者の就労と合理的配慮」
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1 損害賠償とは |
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高次脳機能障がいの原因は病気やけがですが,それが他の人(加害者)の行為によることがあります。 |
代表的なものが交通事故ですが,そのほか労災事故や暴行などによることもあります。その場合, |
被害者に生じた損害をお金に見積もって加害者に請求するのが損害賠償です。損害賠償請求は |
どのように行われるのか,交通事故を例にとって説明しましょう。 |
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理事長コラム 第3回 「高次脳機能障がい者の就労と合理的配慮」
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理事長コラム 第2回 「高次脳機能障がい者の就労と合理的配慮」
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理事長コラム 第1回 「高次脳障がいは『見えない障がい』か」
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